債務整理‐生活保護の援助を受けたい

生活保護をめぐる法律問題について

 債務整理-生活保護の援助を受けたい

 どのような場合に生活保護費の支給を受けられますか?

「最低生活費」を下回る収入しかない人は,原則として誰でも生活保護費の支給を受けることができます。

居住場所や扶養家族の年齢・人数や収入額等を入力することにより,最低生活費・生活保護の要否と保護費の概算等を計算できるエクセルデータソフト(弁護士阪田健夫氏作成)がありますので,参考にしてください(エクセルの水色のセルに入力していってください。)。

生活保護の申請はどこに行けばいいのですか?

生活保護の申請は,原則として,居住地の福祉事務所であり,具体的には,市役所や町役場の保護課(福祉課)となります。

なお,生活保護開始申請書の書式(エクセルデータ)はこちらから

生活保護の法律相談をする費用は?

法テラスを利用することにより,相談料の負担を求められることはありません。
また,弁護士に対し,生活保護の申請を委任するのみならず,申請却下処分等の不利益な処分がなされた場合に,都道府県知事に対し審査請求をしたり,厚生労働大臣に対し再審査請求をすることを委任することもできます。このときも,法テラスを利用すれば,通常,費用の負担を求められることはありません。

借金のある人は生活保護を受けられないのでしょうか?

当該世帯の収入が最低生活費を下回っていれば生活保護の支給を受けられるのであり,借金があれば生活保護は受けられないということはありません。ただ,保護費は,あくまでも最低生活維持のために使うものであり,借金の返済に充てることは望ましくありませんので,借金の問題については,別途,弁護士に自己破産の手続を依頼することを検討してください。

車を持ったままでは生活保護を受けられないのでしょうか?

車の所有に関し,厚生労働省は,生活用品としての自動車について,単に日常生活の利便のために用いられるのみであるならば,保有は認められないとし,例外として,障害者が通勤や通院・通学等に利用する場合や山間へき地等の方が通勤のために必要で,かつ処分価値が小さい場合などには保有が認められるとしています。

しかし,自動車は,特に地方では生活必需品であり,使用実態(常時使用か一時使用か)や使用目的(通勤,通学,通院,子供の送迎等)など,自動車の保有が認められるべき事情を細かく検討して訴えていく必要があります。

なお,事業用品としての自動車はより広く所有が認められています。

持ち家がある場合には生活保護は受けられないのでしょうか?

厚生労働省の通知によれば,処分価値が利用価値に比べて著しく大きいと認められる場合を除き,原則として,世帯の居住の用に供されている不動産は保有を認めることとされています。

リバースモゲージ(要保護世帯向け長期生活支援資金制度)について

平成19年度より,持ち家に居住している世帯で世帯構成員の中に満65歳以上の方がおられる場合(当該世帯構成員の配偶者が満65歳未満である場合を除く)には,生活保護を利用する前にまず各都道府県社会福祉協議会の行う「要保護世帯向け長期生活支援資金」の貸付けを受けることが条件となりました。

被保護者の扶養義務者が,被保護者に対して何の援助もしてないのに,家屋・土地等だけは相続するような現状は,国民の理解が得られないとされて創設された制度です。

リバースモゲージ制度とは,一定の貸付限度額に至るまで毎月決まった額の融資を受け,限度額に達した段階で貸付がストップされるという制度です。原則として貸付を受けた者の死亡により償還期限が到来し,債務の承継人は一括でこれを返済する義務を負います。また,この債務を担保するために不動産に担保権が設定されます。この制度を利用しなければならないのは,500万円以上の評価のある居住用不動産である土地(マンションの場合は敷地所有権)があるケースで,建物を含む評価額の7割(敷地権付マンションの場合は5割)が貸付限度額となります。但し先順位に賃借権等の利用権や担保権が設定されている場合を除きます。

住宅ローンが残っている場合でも生活保護を受けられるのでしょうか?

(1) ローン付き住宅を保有したい場合

 ローンの支払いを繰り延べしている場合,又は,ローン返済期間も短期間であり,かつ,ローン支払額も少額である場合には,ローン付住宅の保有を認め,保護を適用しても差し支えないものとされています。どの程度の期間・どの程度の債務額が,「短期間」「少額」とされるのかについては一律に決められるものではありませんが,例えば東京都は,「期間は5年程度,月毎のローンの支払額が世帯の生活扶助基準の15%以下程度,ローンの残債務額が総額で300万円以下程度」という一応の目安を示しています。

また,別世帯の親族にローンを肩代わりして支払って貰う場合,肩代わりして貰った分は,自立更生に充てられた恵与金として,当該世帯の収入から認定除外の取り扱いをすることも可能です。

(2) ローン付き住宅を手放す場合

 住宅を手放しローンの支払いをしない以上は,生活保護費がローンの支払いに充てられることもありませので,生活保護の受給を受ける障害とはなりません。

現金や預貯金を持ったまま生活保護を受けられるのでしょうか?

現金や預貯金については,最低生活費の半分程度しか保有が容認されず,それを超える額の現金や預貯金があれば収入と認定されて,当初の保護費が減額されるというのが現在の運用です。

生活保護を受けるためには,生命保険は全て解約しなければならないのでしょうか?

生命保険の解約返戻金を資産として活用するため,生命保険契約は,原則として解約することが求められます。

但し,返戻金が少額であり,かつ,保険料額が当該地域の一般世帯との均衡に失しない場合に限り,生命保険契約を解約させないで保護を適用しても差し支えないとされています。なお,保護適用後,保険金又は解約返戻金を受領したときには,当該受領金を返還することが条件となります。

返戻金が少額であるかどうかについては,最低生活費(医療扶助を除く。)の概ね3か月程度以下,保険料額については,最低生活費の1割程度以下という目安が示されています。

親兄弟や配偶者などの扶養義務者がいる場合でも生活保護は受けられるのでしょうか?

扶養を受けられないことが,保護の開始要件とはなっていません。扶養義務者から仕送り等が現実になされた場合には,その仕送り額を収入として認定し,保護費が減額されるに過ぎません。

生活保護では,具体的にどのようなお金が支給されるのでしょうか?

(1)生活扶助 衣食その他日常生活の需要を満たすために必要な物等にあてるもの

(2)教育扶助 義務教育に伴って必要な教科書その他の学用品や通学用品等にあてるもの

(3)住宅扶助 住居や住居の補修等にあてるもの

(4)医療扶助 診察,薬剤等にあてるもの

(5)介護扶助 居宅介護支援計画に基づき行われる居宅介護や福祉用具等にあてるもの

(6)出産扶助 分娩の介助等にあてるもの

(7)生業扶助 生業に必要な資金,器具又は資料等にあてるもの

(8)葬祭扶助 死体の運搬,火葬又は埋葬,納骨等にあてるもの

なお,これ以外にも,生活保護には,各種加算(児童養育加算,障害者加算など)があります。

また,生活保護利用者には,国民年金保険料やNHK受信料など,支払いが免除されるものもあります。

家賃の滞納があり,家主から立ち退きを求められていますが,引越費用や新たに入居するための敷金がない場合にどのようにしたらよいのでしょうか?

新たに入居する先の賃貸人に支払う敷金や日割家賃については住宅扶助として,引越代については生活扶助の移送費として支給を受けることが可能です。

生活保護に関する決定に不服がある場合には,どのようにして争えばよいのでしょうか?

生活保護の決定に対して不服があるときには,都道府県知事に対して審査請求ができます。審査請求は,処分があったことを知った日の翌日から60日以内に行う必要があります。また,知事の裁決に不服がある場合には,裁決を知った日から起算して30日以内に厚生労働大臣に対し再審査請求をすることができます。
さらに,厚生労働大臣の裁決に対しても不服がある場合には,裁判所に対し,行政事件訴訟を提起することができます。具体的には,生活保護の申請却下処分の取消訴訟を提起したり,生活保護の開始を求める義務付け訴訟を提起した上,仮の義務付けの決定を求めていくことになります。
審査請求・再審査請求・行政事件訴訟を提起する場合には,専門的な知識が必要となりますので,弁護士に相談されることをお勧めいたします。

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