一般民事事件-医療をめぐる紛争

医療をめぐる紛争について

一般民事事件-医療をめぐる紛争

受任後の作業の進め方について

 医学に関する専門的な知見を要する困難な事件であり,まずは,協力医のアドバイスを受けながら,過失(注意義務違反)が認められるか否か(有責か否か)の見極めが重要です。
 そのために,診療録や各種検査記録や看護記録やCT,MRI等の画像等を病院から開示を受け,改ざんのおそれがある場合には,裁判所に証拠保全の申立てをして,入手します。

 また,いきなり訴訟提起をするのではなく,病院に対し,説明会の開催を申し入れたり,病院が過失を認める場合には,示談交渉を進めたり,民事調停を裁判所に申し立てて,その手続の中で和解交渉を進めていくこともあります。

 これに対し,医療側に有責と判断されるにも関わらず,医療側と示談ができない場合には,訴訟を提起して,裁判所の判断を求めていくことになります。

過失・債務不履行(注意義務違反)について

 協力医のアドバイスを得ながら,医療記録を精査して事故原因を仮説し,それに関連する重要な事実関係を時系列的に整理した上,医学文献,論文等の医学知見も収集し,過失(=注意義務違反,結果発生を予見でき,かつ,それを回避できたこと)を立証するための証拠を収集します。どの時点でどのような注意義務違反(結果回避義務違反)があったかを明示して主張する必要があります。

 医療過程は,診断・説明・処置の順で進み,それぞれの過程に対応して,診断→解明義務,説明→説明義務,処置→治療義務が発生します。

 過失の態様としては,医原病型・作為型(医療行為が原因となって結果が発生する類型。例えば,禁忌処置,手技ミス等)と不作為型(見落としや誤診などによって行うべき医療行為がされず,疾病が悪化する類型。例えば,療法・術式選択の誤り,説明義務違反,問診・検査義務違反,転医義務違反等)があります。

 注意義務の基準については,平均的医師を基準とし,学問としての医療水準ではなく,診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準を基準にするとされています(大学病院ではなく開業医であるからと言って,注意義務のレベルが軽減されるものではありません。)。

 また,過失の有無の判断は,医療行為の時点までに得られた情報を基礎に,プロスペクティブな判断(将来予測判断)が求められており,医師に結果責任を課すことになってはいけません。実際には,多数の症状・徴候・検査結果と,想定される複数の診断との関連及びその時点での発生頻度を考慮しながら,時間的経過を見守って診断の精度を上げていくのが実際の臨床での診断プロセス(鑑別診断)とされています。

因果関係について

 事故原因や原因疾患が特定され,それとの関連で,過失と結果(後遺障害や死亡結果等)との間に因果関係が認められることも必要ですが,この点,判例は,「一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を将来した関係を是認しうる高度の蓋然性(80%くらいの心証)を証明することであり,その判定は,通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし,かつ,それで足りる。」と判断しています。

 また,事故原因や原因疾患の特定,因果関係の有無の判断は,レトロスペクティブな判断(過去を振り返っての事後的な判断)が求められます。不作為型の場合には,仮定的な因果関係(救命可能性・治癒可能性,医師が注意義務を尽くして診療行為を行っていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性)の判断が求められます。

損害について

 損害額の計算は,基本的に交通事故の場合と同様に考えます。

 なお,末期癌などの場合で,医療過誤がなくとも,いずれ死亡していたと認められるケースについては,医療過誤がなかった場合の生存(延命)可能期間を認定し,逸失利益等の損害賠償額も,その生存可能期間に限定される場合があります。

 また,過失が認められるが,因果関係までは認められないケースでも,過失がなければ,患者がその死亡の時点において生命を維持していた相当程度の可能性,あるいは,重大な後遺障害が残らなかった相当程度の可能性(高度の蓋然性までは要求されない。)が認められる場合には,逸失利益は認められなくとも,適切な治療を受ける期待権が侵害されたとして,慰謝料が認められることもあります。

 また,患者側の素因(特異体質等)が原因で損害が拡大したような場合には,過失相殺の規定を類推適用して,その素因が損害の拡大に寄与した割合分について,損害額が減額されることもあります(素因減額)。

参考となる関連サイト

 

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